@Shibuya TSUTAYA O-nest
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mights interview
No Buses 近藤 × スグロリョウゴ
海外アーティストのサポートアクトやサマソニ出演など躍進が続くNo Buses。その大きなきっかけとなったのが「Tic」という楽曲とそのMVであるのは間違いないだろう。同曲のMVも制作し彼らの撮影も多く手がけている写真家のスグロリョウゴを招き、ボーカルでソングライターの近藤とともにバンドのこれまでと現在地点について聞いた。
── まず、No Busesが結成されるまでについて聞かせてください。
スグロ それは俺も聞いたことないなぁ。
近藤 ですよね(笑)。僕は高校の頃、学校に軽音部がなかったから当時はバンドをちゃんと組んだことがなくて。なので「大学に入ったらバンドを組みたいな」と思っていて、大学に入学してからは今も所属しているUKロック中心のサークルに入ったんです。そこではコピーが中心でオリジナルをやっている人がいなくて、オリジナルをやりたいと思っていた自分的にはちょっと諦め気味でひとり宅録でやっていこうかなと思っていたところに、今のギターとサークルで出会って。たまたま2人でメシを食べているときに「Rat」という高校のときに作ったオリジナル曲を聴かせてみたら、「いいね。一緒にやりたい!」という声をもらって、一緒に活動を始めたのがきっかけです。
── なるほど。もともと近藤さんはどういう音楽を聴いてきたんですか?
近藤 中学生ぐらいまでは本当に音楽に興味がなくて、ゲーム音楽とももクロくらいしか聴いてなかったんです(笑)。高校に入ってからはバンドを聴くようになって、急にARCTIC MONKEYSを聴き始めてカッコいいなと思ってハマりました。確か『AM』(2013年)が出る前ぐらいですかね。高2ぐらいでギターを持ち始めて、そのへんからUKロックとかUSインディーとかにハマり出して、聴き漁った感じですね。
── 初ライブはいつぐらいでしたか?
近藤 2016年10月だったんですけど、池袋でやったちょっと変わった企画ライブで。お客を集められず、ひとり1万ぐらい払って大変でした(笑)。「このままだったら、このバンドはもう終わりだな」と、1発目のライブにして心がバキバキに折られましたし。
スグロ そうだったんだ(笑)。
近藤 結成から2ヶ月足らずで解散がよぎりました(笑)。でも、もうちょっと根気よくやってみようかと思って、いろんなライブハウスに音源を持っていって。それをやりだしてから初めて出たのが下北沢THREE。そこからですね、ちゃんとライブをやるようになったのは。
── 音楽的には、結成時点でやりたいことは固まっていたんですか?
近藤 大学でバンドを組もうと思った時点で、こういうことをやりたいと言ってました。高校のときはメタルコアとかも好きだったんですけど、でも一番好きなのはやっぱりUKロックとかそのへん。僕自身、そういう音楽を聴き始めてまだ日が浅いといえば浅いから、いろんな音楽が新鮮に聞こえたりするので、そういう影響は至るところに出ているかもしれませんね。
── となると、この先活動を続けていったら、そのときの感性や好きな音楽が変化することで出す音も変わっていくのかもしれませんね。
近藤 今の時点でもいろんな変化があるし、聴いているものでその時期その時期の音が変わっているので、この先もっとそうなるかもしれません。
── それこそ、バンド名の由来となっているARCTIC MONKEYSも10代でバンドを始めて、活動を重ねるごとにどんどん音楽性が変化してしますし。
近藤 そうですよね。それが理想です。
── ヴィジュアルや映像など、視覚面に対してはどこまでこだわりを持っていますか?
近藤 カッコつけすぎないようにはしています。カッコつけないでカッコいいことをやっているのが、僕らにとっては一番いいと思うんです。そこは、みんな意識しているんじゃないかな。あとは、今の環境だと物理的にすごい詰め詰めのものが作れないというのもあるんですけど。
スグロ カメラとか準備できないもんね。
近藤 「Tic」のMVを撮ったのも大学の施設にグリーンバックの部屋があったので、いつも写真でお世話になっているスグロさんに撮ってもらって。本当にそこまでお金がかかってないんです。
── なるほど。そもそもスグロさんとはどうやって出会ったんですか?
スグロ ちょうど1年前ぐらいのライブだよね。その頃、僕はGroup2というバンドの写真を撮っていたんですけど、友達から「No Busesってバンドがカッコいいよ」と聞いて。たまたまライブをやっているのを観たら、本当にカッコよかったんです。そこから何回か観る機会があって、カッコいいから写真を撮ろうと思ったんですよね。
近藤 最初に家族写真みたいなのを撮ってもらって(笑)。そこから、よくライブを撮ってもらうようになりました。
スグロ ライブに行くんだったら、どうせカメラがあるんだし写真撮ろうぜ、と。
── スグロさんにとって、No Busesのどういったところが刺さったんでしょう?
スグロ やっている音楽がめちゃめちゃカッコいいのに、実際メンバーに会ってみるといい感じの不器用さがある。自分のやりたいことを貫いてやっている、その人間らしさに惹きつけられて、写真を撮りたいなと思ったんです。
── そうなんですね。ちなみに、おふたりはおいくつなんですか?
スグロ 僕が今年24歳で……。
近藤 僕は今年21歳です。
── 同世代ですね。No Busesが活動している範囲で構いませんが、同年代のバンドを客観的に見てどう思いますか?
近藤 物理的にバンドの数が多いなと思うけど、みんな限られた環境でもかなりのクオリティのものを作っている気がします。今ってひとりでも携帯で音楽を作れちゃう時代だし、自分もそうやってきたからこそ、同じような人たちでバンド人口も増えているのかなと感じますね。実際、年下でもすごいと思う人もたくさんいますし。
── 中にはNo Busesのように、バンドとカメラマン、バンドと映像作家みたいにタッグを組んで活動しているバンドもいると思うんです。
スグロ 僕はその輪がどんどん大きくなっていけばいいなと思っていて。それこそNo Busesと僕みたいな関係性が増えれば、そういう人たち同士の横のつながりも増えるし、選択肢もたくさん増えるはずですし。
── ちょっと話を戻しますが、No Busesの写真を撮り続けてきたスグロさんは「Tic」のMVを制作することになります。このMVをASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんがツイートしたことで、バンドの存在を初めて知ったという人も少なくないと思います。
近藤 確かあのツイートの前までは、再生回数も数千回程度だったと思います。確かにあれを世に出してから、いろんなところから声をかけていただく機会も増えたし。今までも音源をYouTubeに上げることはあったけど、これを機に「やっぱり印象に残すにはヴィジュアルも大事なんだ」と重要性を感じました。
── このMVを作るとき、おふたりでコンセプトについては話し合ったんですか?
近藤 結構ざっくりしてましたよね。
スグロ そうだね。その時点ではすでに友達みたいな関係だったので、なんとなくやりたいことはわかっているような感じで。
近藤 なので、撮るだけ撮って、あとは全部投げてしまって(笑)。それこそYouTubeに投稿する当日ぐらいに完成した映像をもらうほど、行き当たりばったりでした。実際、観たら「これでいい!」と一発で気に入って、思っていたどおりとおり、やりたかったことがそのまま形になっていました。
── スグロさんがMVを作るのは、これが初めてだったんですか?
スグロ 初めてです。専門ではないし、学校の授業で作ったことがある程度でしたね。
── 反響はスグロさんのもとにも届いていますか?
スグロ 全然知らないサークルの後輩からも「観ました。No Busesカッコいいですね」という声をもらいました。
── このMVは単純にカッコよく演奏しているだけじゃなくて、随所にファニーな要素も含まれていますよね。その落差も観ていて気持ちいいんですよ。
近藤 曲もどちらかというと無機質というか温かみのないものなので、温度差という面では綺麗なハマり方をしたんじゃないですかね。
── それをいきなり体現できているのもすごいなと思いますよ。実際、アジカンのゴッチさんやゲスの極み乙女。の川谷絵音さんなど、いろんな人から反響があって、それによってバンドを取り巻く環境も少しずつ変わってきたんじゃないでしょうか?
近藤 アジカンは小学生の頃から曲を耳にして好きだったので、普通に嬉しかったというのはあります。でも、それで何かがどうなったかというのは特にはなくて。友達から「ツイートされてるよ!」と聞くぐらいで、テンションだけは上がったけど大した変化はなかったです(笑)。むしろ変化については先月ぐらいに、本当に理由がわからないですけど海外からのアクセスが爆発的に増えて。今、MVの再生回数が19万ぐらい(※8月27日現在)なんですよね。
── 確かに、コメント欄には英文メッセージが多いですし。
近藤 そうなんです。アクセスもアメリカ、イギリス、ブラジル、スペイン、メキシコとか、アクセス全体の8割以上が海外からなんですよ。それによって今、海外のメディアからインタビューさせてほしいとか、曲の解説動画を上げてほしいというメールも届くようになりました。
── それって、何か特別なきっかけがあったんですか?
近藤 いえいえ、本当に突然で。どうも様子を見ていると、関連動画に急に「Tic」が出てきたらしくて。
── その状況は想定していなかったものですよね。
近藤 まったくです。あの曲も、5曲録った中でいいのがあれぐらいしかなかったから出そうかぐらいのテンションで(笑)。
── 海外といえば、最近ではTAPE WAVESやCOMPUTER MAGICなど海外アーティストとの共演機会も増えています。
近藤 去年からちょっとずつ、海外アーティストとライブをすることがあって。そういうライブになるとお客さんの目的は僕らじゃないことが多くなるけど、ライブが終わったあとに声をかけてもらったりすると「ああ、響いたのかな」と思ったりします。本来、そういう海外の音楽が好きで始めたバンドですし、そこのお客さんに刺さるのは嬉しいことですよね。
── さらに、『SUMMER SONIC 2018』にも「出れんの!? サマソニ!?」枠で出演します(※取材時はサマソニ開催前)。
近藤 サマソニは行くのも初めてだし、そもそもこんなに大きなフェスにお客さんとしても行ったことがないし、いろんな意味で楽しみです。好きなバンドもたくさん出ますし。
── そういった人たちと、ある種共演という形になりますね。
近藤 そこまで現実的に考えているわけではないんですけど、単純に楽しみ。自分が聴いてきたバンドたちと同じタイムテーブルに、自分たちの名前が載っているわけですし、これが続くことであまり驚きにならないような存在になれたらいいなと思います。
── そのへんがモチベーションにプラス作用を及ぼすと。
近藤 はい。やっぱりバンドを始めた頃からフェスに出たいなとはメンバーと話していたので、こうやって実際に出演できることになると感慨深いものがあります。気持ち的には中継地点をひとつ通過したような感覚です。
── さきほどMVに海外からのアクセスが多いという話がありましたが、海外進出についてはどう考えていますか?
近藤 よく聴いていたのが外国のバンドばかりなので、そういう音楽が生まれた場所に興味がありますし、やっぱりそこは目指したいですよね。でも、自分たちが聴きたいものを作るのがバンドの目標であり、最終地点なんですよ。それが前提としてあるので、まずはそこを追求できたらと思います。
── スグロさんには、今のNo Busesのこの状況はどう映りますか?
スグロ 僕はただのファンなので、単純に嬉しいですよね(笑)。どんどんみんなに知ってもらえるのは、ファン冥利に尽きます。
── 最後に、こういうものを作りたいという目標はありますか?
近藤 これからも雰囲気とかスタンスは変えずに、あまり肩肘張りすぎずカッコよいものを作っていければなと。スグロさんもその感じが持っていると思うので、そこは守っていければと思います。
取材・文: 西廣智一
編集: 酒井慎司
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スグロリョウゴ