2018.10.1(MON)
@Shibuya TSUTAYA O-nest
OPEN: 18:00 / START: 19:00

mights interview

時速36km × キシカイセイ


“誰にも勝てない音楽を”という言葉を掲げ、都内を中心に活動し注目を集める時速36㎞。100mを10秒で走る速度そのものを冠した彼らは、正にその名の通り全速力で2018年の今を駆け抜けているように思う。そして彼らに欠かせないデザインを手がけるデザイナー・キシカイセイ。彼らの関係性や、デジタルネイティブ世代である彼らがごく自然に行う情報発信方法などについても話を聞いた。


── この度はmightsへの出演ありがとうございます。最初にバンドのプロフィールを教えてもらえますか?

オギノ(時速36km/Ba) 2016年12月結成の現在4ピースロックバンド‥だよね?

全員 うん。

オギノ 最初は3人だったんですけど、今年の2月からギターの(石井”ウィル”)開くんにサポートに入ってもらって、4月に正式に加入して4ピースになりました。江古田っていう小っちゃい街があるんですけど、そこにある武蔵大学のサークルで組んだバンドです。僕と仲川と石井が23で、松本が2コ下の21です。


── 勝手に同級生かと思っちゃっていました。松本さんは一人だけ年下ということで後輩的な扱いを受けているんでしょうか?

松本(時速36km/Dr) いや、一番雑に扱われてるのは(仲川)慎之介なので。

仲川(時速36km/Vo, Gt) 間違いないですね(笑)

キシ 僕は、出身大学と今の勤め先くらいしかプロフィールはないんですが、東京造形大学でグラフィックデザインを専攻していてパッケージデザインとかロゴデザインを学んでました。今は縁のあった会社でデザイナーとして働きつつ、フリーでも活動しています。時速36kmまわりのことは最初からずっとやらせてもらってますね。


── もともとキシさんと時速36kmはどういったつながりだったんでしょうか?

オギノ もともと自分とキシが中学からの同級生で、キシが美大にいってデザインを勉強していることは知っていたので、バンドを始めてモノをつくろうってなったときに声をかけたのが時速36kmとキシカイセイの最初のきっかけですね。初ライブが終わってすぐだったので1年ちょっと前かな。

キシ 彼らの最初のライブのすぐ後にロゴとシンボルマークをつくってほしいという話をもらいました。まだ大学生だったんですが就活も終わって時間もあったので、そのときはロゴ、シンボルマーク、「ドライビングフォース」のジャケット、フライヤー、告知ポスターとかガッツリつくってましたね。


── 時速36kmのロゴも、「ドライビングフォース」のデザインもとても印象的です。

キシ (ロゴは)自由に作っていいとのことだったので自分の作風を意識して2案出してみたんですけど、そのうちの1つに決まりました。スピード感とか大きい音を鳴らすようなイメージで太めのフォントにして、シンボルマークの三角は方位磁石をイメージしています。加えて、確か「一般の人がママチャリで飛ばしたら時速36km」って話を聞いて、バンドのイメージと合ってるなと思って自転車のフレームと、バンドの行く先を示すような意味で方位磁石を組み合わせてつくりました。

松本 あれ方位磁石だったんだ。

キシ え?言ってないの?

オギノ ごめんごめん。そもそも方位磁石の話は俺も初耳だった。

キシ あれ?ホント?ごめんね(笑)


◼️「夢を見ている」は目の上のたんこぶ

── 「夢を見ている」という楽曲についてお聞きしたいのですが、自分もYouTubeであの楽曲で時速36kmに出会いましたし、バンドの曲の中でも特に再生回数の多い楽曲だと思います。反響も大きいのではと思われますが、あの曲はバンドにとってどういった存在でしょうか?

仲川 「夢を見ている」は‥大事な曲、ですね。めっちゃ大事なんですけど、それと同時に目の上のたんこぶというか、あの曲を越えていかなきゃという意識が常にありますね。

松本 あれが一番反応がいいですからね。

仲川 早くあれを脱却はしたいんですけど、まだ無理かなというか。


── なるほど。バンドの基準にもなっているんですね。

一同 そうですね。

オギノ あの曲は、それこそキシと自分とあと2人仲のいい友人がいるんですけど、その4人で遊んだ翌日くらいに書いて、その4人のことを書いた曲なんです。なので、あの曲だけ他の曲と少し趣が違うんですよね。めちゃめちゃポジティブなんで。

仲川 あの曲のおかげで青春パンクバンドって思われたりするよね。

松本 ライブの誘いとかも、そっち(青春パンクバンド)系の誘いが一時期増えたよね。


── ライブの誘いも「夢が見ている」公開のあとに増えましたか?

オギノ そうですね。公開して割と再生回数の伸びもよかったんですけど、1万回を越えたくらいから急にメールの量もそれまでの2~3倍くらいにはなりました。


── ちなみにキシさんは、自分たちのことが歌われてるということは認識していたんでしょうか?

キシ それを聞いたのはだいぶ後だったんですけど、オギノが作詞・作曲してることは知っていたので、中学時代から知ってる身としては”オギノらしい”曲だなとは最初聴いたときから思いました。


◼️時速36kmは早め早めに動いている

── 最近では7月7日・七夕の日に事前告知も行った上で新曲「七月七日通り」のMVを公開し、同時に自主企画の開催も発表。日付の変わった7月8日からは同曲を含むバンドの楽曲の各種サブスクリプションサイトでの配信も開始しました。すごく綿密に練られた展開のように見受けられるんですが、ああいった流れはどのような経緯で決まっていったんでしょう?

オギノ 主導は僕がやっていました。サブスクの手配はお世話になってるライブハウスの人にやってもらったんですが、スケジュールや発表する内容はほとんど僕ら主導で決めましたね。7月7日に公開しようっていうのは、どこで決まったんだっけ?

石井(時速36km/Gt) なんか、サラッと。

仲川 ノリでしょ。

松本 あの曲でMVを作ろうってなったときから、7月7日に出したいよねって話はしてました。

オギノ あの曲は去年の12月にはできていたので。

キシ 「七月七日通り」は自分もだいぶ前から聴かせてもらっていたので、オギノたちが早め早めに動いている印象は近くで見ていてもありました。

オギノ 監督の元さんは紹介してもらったんですが、プププランドとかGateballersとかtricotとか主にライブ映像を撮っている方らしいんですけど、一度監督とメンバーでお酒を飲んだら話も合ってお願いしました。僕らは江古田なんですけど、監督も隣の大学に通っていたらしくて。そのときにも7月7日に公開したいって話は出ていたように思います。


── 映像の質感や仲川さんの気怠そうな雰囲気など、とても印象的です。

オギノ あの仲川やる気ないですよね(笑)


■ネットだけでもライブハウスだけでもない、イイ真ん中をいけたら

── バンドの発信方法についてお聞きしたいです。YouTubeにMVを投稿しているのはもちろん、時速36kmは精力的にライブ映像や弾き語り動画や音声などをTwitterにアップしているように思いますが、意識していることはありますか?

オギノ SNSとかホームページを動かしてるのは僕ですね、コイツらが何もやらないので‥。否定的な言い方にならなければいいんですけど、まずライブハウスでライブをして、それをふらっとライブハウスに来たお客さんに見てもらって好きになってもらう。それを繰り返してバンドが大きくなっていくということだけをやるんじゃなくて、Twitterやインスタとかで拡散をして、見てくれる人が増えた状況でライブをやる。それで底力をつけていくっていう順序も並行してやっていった方がバンドの成長のためには効率がいいんじゃないかとは思ってます。なのでそうしようと思ってSNSとかホームページとか作ったんですけど、こうすれば閲覧数が伸びるだろうとか、これをバズらせようみたいなことまでは計算してやってる訳ではないです。


── 正に次にお聞きしたかったこととつながるのですが、時速36kmのライブの数は多い方かと思います。先ほどのような意識がありながら、ライブという場についてはどう捉えていますか?

オギノ 多いですね(笑)。さっき言ったようなSNSの拡散の力がどんどん大きくなっているとは思うんですけど、やっぱり僕ら4人が聴いてきた音楽はライブをみて”音がデカい”とか”カッコイイ”と思って気に入ることが多かったので、そういう意識が4人の根底にはあるんだと思います。音源がどんなによくてもライブがカッコ悪かったらダメだと思うし、僕らが中高生のときから好きでずっと聴いてるバンドはライブハウスでカッコイイライブをしているバンドなので、インターネットでの発信だけでもないしライブハウスだけでやってる訳でもない、イイ真ん中をいけたらいいなと思ってます。


── すごく興味深いです。ちなみにみなさんは普段どうやって音楽やバンドの情報をキャッチアップしていますか?

仲川 やっぱりネットが多いですね。あとはサブスク。Apple Music入っているので、それとかYouTubeが多くなっちゃいますね。どうしても。そんなにお金もかからないですし大量に聴けるので。それで気に入ってライブに行ったりももちろんしますね。


◼️石井はいいタイミングで入った

── 話を伺ってると2017年の変化が大きいように思いますが、どんな1年でした?

オギノ と言っても動き始めたのは後半半分て感じです。

松本 次リリースするレーベルの人に初めてライブに誘ってもらったのが2017年の6月とかで、そのライブが2回目のライブだったんですけど、そこから少しずつって感じです。8月には初めて大阪に遠征してライブもしましたし。

オギノ 地盤固めだったのかなと思います。関わる人もそうですし、今ライブでやっている曲も2017年に作ったものがほとんどだし、メンバーのことでは3人でやっていて限界を感じたと言うか、もっとできるだろうと思って開くんに加入してもらったのもありました。おかげさまでと言うか、運もあると思うんですけど2018年の上半期はいろいろ動き出して、やらせてもらってますね。

松本 (石井は)いいタイミングで入ったよね〜

オギノ 俺はそれずっと言い続けるからな!

松本 最初3人だったのでライブハウスのノルマも3分割だったんですよ。

石井 サポートで入ってた時期はまだノルマは3人で分割していて、自分は負担がなかったんです。

オギノ 正式加入した瞬間からキッチリ4分割にしましたね(笑)


── 今後の予定についてもお聞きしたいです。

オギノ 11月7日に7曲入りのCDをリリースするんですが、10月28日に3回目の自主企画をやります。そこからリリースツアーが始まって、名古屋とか京都とか大阪を回って東京に帰ってくる予定です。なのでまずはそれをがんばりたいですね。あとは、年内の予定がだんだん決まって来たかなという感じです。で、大丈夫ですか?

仲川 その通りです。(一同 笑)それをしつついい曲が書けたらと思ってます。

キシ 自分はフリーとして関わっているのはいま時速36kmだけなんですが、はじめからすごく楽しくやらせてもらっているのでうまくデザインの力で彼らのブランディングだったり、助けになるようなことができたらと思ってます。ただ、彼らはずっと金がなくて自分に申し訳ない気持ちがあるようで、それを感じてもいるんですけど、彼らのデザインに関わることで自分が得ているものもあるので、お金とかそういうことじゃなくてお互いに何か与え合えるものがあればいいなと思います。

松本 これだけずっとお世話になってるのに、未だになんのギャラも発生してないってヤバイよね。

オギノ 「夢を見ている」のときに話に出た仲いい4人なんですけど、キシと自分の他に漫画家志望のやつと音楽業界に勤めてるやつがいるんですよ。ウチらがバンド組んだときに、漫画家志望のやつが連載して、アニメ化されて、それにキシがデザインで関わって、主題歌をウチらが歌って、それに音楽業界のやつも関われたら面白いよねって話は飲みながらしてたんですよ。なのでキシがそう言ってくれるのはめっちゃうれしいです。


── 先ほど2018年の前半で物事が動き始めたとありましたが、いまキシさんをはじめ協力してくれている人たちに自分たちが活躍してフックアップしたい、というような意識はありますか?

オギノ スタッフや撮影に大学の後輩に入ってもらったりもしてるので、自分たちのライブが大きくなることで彼らにも新しいつながりができたらいいなとは思ってます。就職なのか、何か次のステップに進むきっかけが生まれたらとは思いますね。僕らが活躍することで大学の他のバンドにも刺激になればとも思いますし、大学とか江古田ってのは大事にしていきたいです。どうですか仲川さん?

仲川 大事にしていきたい。

オギノ それだけかよ。もっと話せよ。


── でも、普段言葉数が少ないのに歌ではしっかりと伝えてくれるギャップがいいってこともありますよね。

松本 人に言われたことがあるんですよ。オギノがつくってる曲と慎之介がつくってる曲で、向けている対象が違うって。慎之介が書く曲は人に向けて歌ってる曲が多くて、反対にオギノの書く曲は自分に対して語りかけてるような気がするって、言われたことがあって、自分はすごくしっくり来ましたね。

キシ キャラクター性が仲川とオギノで全然違うので、やっぱりそこが(時速36kmは)おもしろいと思いますね。


取材・文・編集: 酒井慎司


時速36km

キシカイセイ